フィークルというクレア地方の小さな村で、フィドルの名手、マーティンヘイズの授業を受けられると聞き、参加することにしました。開催直前に知ったので、宿の予約は出来ず、野宿覚悟でこの村に飛び込んだのです。何軒か宿をあたりましたが、もうどこも満杯。偶然、キャンセルが出たホステルに泊まれることになりました。いろんな人が僕が泊まるための宿を探してくれたのです。ここでも感謝感謝でした。

↓フィドルの神様、マーティンへイズ。ミルタウンマルベイのフィドルリサイタルで初めて彼の生演奏を聞いてから、彼をそう思うようになりました。彼は、彼の音と同じように優しく、丁寧に、ゆっくりと話し教えてくれます。目の前で弾いてくれる彼の音は、想像を絶するほどよく響き渡り、圧倒的な何かが僕の感情を激しく揺さぶります。鳥肌が立って、涙が出そうになりました。野生の大きな力を持った動物がしなやかに歩くイメージ。時に人が優しくささやく声のように、時に子ども達のはじける笑い声のように響く。どこか寂しいような、どこか楽しくて飛び跳ねたくなるような、さまざまな感情が僕の中に湧き上がる、そんな密度の非常に濃い音。神々しささえ感じました。残念ながら、彼が過去に出したどのCDからも、あの現場で感じたエネルギーは伝わってこないです。CDには録音されない、何かがあるようです。

彼の生演奏に近い緊張感を感じることができるCDは「Live in Seattle」。とにかく、アイルランド音楽ファンなら絶対聞いておいてほしい作品です。特に2トラック目は30分近い演奏で、その鬼気迫る壮絶な緊張感はいつ聞いても思わず思考が停止して聞き入ってしまうほどです。アマゾンで購入できます。

フィドルの神様 マーティン・ヘイズ

↓マーティンへイズも教わったこともある、ヴィンセントグリフィンの演奏。お年寄りだが、音は非常に若々しく、どこまでもまっすぐに突き進むような覇気に溢れています。素晴らしい音。彼の授業は一人ひとりのフィドルをチューニングし、どんどんと課題曲を進んでいきます。厳格な性格ですが、時折優しいおじいさんの顔になります。

ヴィンセント・グリフィン

↓フィドルの名手たちの演奏。左はパットオコーナー。Pat O’Connor

Pat O'Connor

↓フィークルの町並み。

フィークルの町並み。